今回は埼玉奥秩父の名峰、両神山を紹介します。
百名山でもある両神山は、ノコギリの歯のようなギザギザとしたシルエットが特徴的です。
コースは原生林を感じられる日向大谷コースを選びました。
初夏のこのコースは、マイナスイオンあふれる緑豊かな渓谷美を楽しめます。
沢沿いを歩いたり、適度なクサリ場があったりと、登山の魅力がつまったコースです。
頂上からは天気がよければ富士山、八ヶ岳、浅間山方面の山々を見渡せます😀
両神山のコース情報や注意点をまとめてみましたので、両神山登山に興味のある方の参考になれば嬉しいです。
【厳選30冊】山好きに読んでもらいたいオススメ本を「カテゴリー別」に紹介します!
【心を打たれる大絶景】3つの尾根でグルッと1周・初夏の谷川岳トレッキング
【見所満載の百名山】 那須岳(茶臼岳・朝日岳・三本槍岳)日帰り登山
両神山 基本データ
両神山は埼玉県の秩父市と小鹿野町の境に位置し、三峰山、武甲山と共に秩父三山の一つに数えられる名山です。
春になるとヤシオツツジやアカヤシオ、秋には落葉樹林の紅葉を目当てに多くの登山客が訪れます。
両神山という山名の由来は、
- イザナギノミコトとイザナミノミコトの二神(両神)を祀っているため
- ギザギザな山容が龍のように見えることから、龍神を祀る山として龍神(りゅうかみ)が転じた説
- 日本武尊が東征の際に八日間、この山を見ながら歩いたという逸話から、八日見(ようかみ)山と呼ばれ、それが転じた説
など複数あり、古くから信仰の山として知られています。
山中には「両神神社」「両神御嶽神社」「龍頭神社」の奥社があり、大正初期までは女人禁制の山でした。
標高 | 両神山:1,723m |
---|---|
所在地 | 埼玉県秩父群小鹿野町 |
エリア | 奥秩父山塊 |
登山適期 | 4月中旬から11月中旬 |
新緑 | 5月頃(アカヤシオは5月中旬から下旬) |
紅葉 | 10月 |
山頂からの展望は雄大で浅間山や、八ヶ岳、富士山まで、まるっと見通せます。
ただし山頂はデコボコした狭い岩場なので、登山者が多いと、のんびり休憩とはいきません。
食事休憩は清滝小屋に広いスペースがあるので、そちらのほうがゆっくりできます。(21/7/16に両神神社を通りかかったところ、テーブル付近に大きなスズメバチを見かけたので、両神神社の休憩スペースはオススメできません!)
両神山の各種コース概要については、下段のコースデータで紹介しています。
両神山コースデータ
コースデータ詳細:【】は通常コースタイム
- 日向大谷口(標高約672m)→【0:35】→会所(標高約697m)
- 会所→【1:30 】→清滝小屋(標高約1,290m)
- 清滝小屋→【0:50】→両神神社(標高約1,627m)
- 両神神社→【0:30】→両神山(標高約1,723m)
- 両神山→【0:20】→両神神社(標高約1,627m)
- 両神神社→【0:35】→清滝小屋(標高約1,290m)
- 清滝小屋→【1:10】→会所(標高約697m)
- 会所→【0:30】→日向大谷口(標高約672m)
通常コースタイム:約6時間/9km(休憩含まず)
日向大谷コース
「ひなたおおや」と読み、両神山でもっともポピュラーなコース。
頂上付近にある両神神社や両神御嶽神社の表参道でもあり、コース途中に水場やトイレもあります。
かつての修験道のなごりとして、石碑や石仏が多く残り、道標の役割をはたしています。
薄川(すすきがわ)沿いの登山道は、美しい彩りの渓谷美が見どころの一つ。
頂上付近には適度な難易度のクサリ場もあり、幅広いレベルの人が楽しめるコースです。
白井差新道コース
白井差(しらいざす)にある、山中邸裏から登る初心者向けのコース。
白井差新道は私有地のため、利用するには土地の所有者である、山中さんへの事前予約と環境整備料(1,000円)が必要になります。(電話:0494-79-0494)
登山道は丁寧に整備され、登山客からも人気のようです。
整備された登山道と駐車代で1,000円であれば、そこまで高くない金額だと思います。(下山後に登頂バッチももらえます)
山中さんの人柄を知りたい方は、こちらのインタビュー記事をのぞいてみてください。
登山者からも人気があり、面白い人と評判です。
静かな登山を楽しみたい人、新緑や紅葉のシーズンに駐車場難民になりたくない人にオススメです。
八丁尾根コース
八丁峠から山頂までの尾根を八丁尾根といい、急峻な岩場が多く、クサリ場が続く上級者コースです。
百名山一筆書きに挑戦していた田中陽気さんも、苦戦するほどの難コース。
八丁峠へ至る登山口は何箇所ありますが、いずれも山の中にあり、アクセスするだけでも苦労します。
山中にある清滝小屋に泊まり、余裕をもってじっくり楽しみたいコースです。
両神山コースレポート
日向大谷から清滝小屋へ
初夏の薄川(すすきがわ)沿いの登山道を歩きたくなり、10年ぶりの両神山へ。(登山日は21年7月16日)
日向大谷口にある無料の駐車場に車を止め、出発です。
駐車場を上がると昔ながらの無料のトイレがあり、その先が日向大谷口バス停です。(近くには自販機もあります)
バス停横にある階段を上がると、
日向大谷コースの出発点である両神山荘が見えてきます。
両神山荘手前には100円チップのきれいなトイレもあります。
もろもろの準備を済ませ、いざスタート。
石鳥居をくぐると、本格的な登山道のはじまりです。
両神山は古くから信仰の山として有名で、そのなごりである石仏や石碑が随所に残っていました。
歩き出しは足慣らしにちょうどいい、緩やかな道が続きます。
ちょっとした岩場をこえ、しばらく歩くと
七滝沢コースの分岐にたどり着きます。
10年前に登りで使った七滝沢コースは、台風の影響により通行禁止になっていました。
分岐を少し進んだ先には、「会所」というテーブルとイスのある広場があります。
この先は薄川(すすきがわ)沿いを歩く、このコースの見どころの一つです。沢の流れる音と、あざやかな緑が心を和ませてくれます。
沢沿いを離れるまで、計4回ほど岩づたいに沢を渡ります。
水量の多い時は、渡渉ポイントを見失わないよう注意して渡りましょう。(ストックがあるとバランスをとるのに安心です)
沢沿いの登山道は自然美が素晴らしく、
苔むした岩や木の根、カエデなどの広葉樹におおわれた登山道に心がほっとします。
ただ、ところどころすれ違うのがやっとの場所もあるので、すれ違う時は安全な山側で止まって待ちましょう。
最後の沢を渡ると、「八海山」とよばれる地点に到着します。
標識は台風の影響か、傾いていましたが、標識の上には立派な不動明王像がありました。
八海山から先は、なかなかの急坂が続きます。
途中、白藤の滝への分岐(往復約30分)にて、「白藤の滝へは台風19号の影響で迷いやすくなっているので、ルートを控えるように」とのお願いがありました。
傾斜が増し、前日の雨で滑りやすくなっている山道を進んで行きますが、あいかわらず緑がきれいなので、不思議とツラいという気持ちはわきません。
さらに登っていくと冷たい湧き水が流れる、「弘法之井戸」に到着します。
手ぬぐいをぬらし、顔の汗を拭いた時の気持ちよさは、夏の暑い日にはたまりません😆
もちろん飲用もOKです。
ここから清滝小屋まではもう少し。
最後の登りをのり越えると、
ロッジ風で立派な「清滝小屋」へ到着です。
清滝小屋から両神山山頂へ
清滝小屋はかつては有人小屋として営業していましたが、現在は無人小屋です。
付近にはテント場や、きれいなトイレと水場もあります。(下段に詳細あり)
清滝小屋の裏には、小屋の由来になった「清滝」がありました。
けっこうな落差のある立派な滝で、昔はここも修行に使われていたようです。
先へと進み、ジグザグの急坂をこえると、七滝沢コースと合流します。
このあたりから登山道が霧につつまれ、幻想的な雰囲気に。
原生林が残る登山道がいっそう魅力的に映りました😃
しばらく緩やかな尾根が続いたあとは、クサリ場とロープが連続する難所が現れます。
この日は露岩や木の根が濡れていたので、注意深く進みましょう。
百名山だけあって手厚く整備されていますが、油断は禁物。
難所をのり越えたあとは、緑のトンネルが!
霧とあいまって、苔と原生林がイキイキしてました。
しばらく進み、赤い鳥居がみえてきたら、「両神神社」です。
鳥居の前には2体のかわいい狛オオカミが座っています。
見た目は古そうですが、立派なたたずまい。
秩父をはじめとする武蔵野のエリアは、オオカミは神様の使いとして敬われており、人々の信仰の対象でもあります。
神社のすぐわきには、休憩用のテーブルがありましたが、大きなスズメバチがいたので、早々に退散。(しばらく行ったところにも休憩用テーブルがあります)
両神神社の奥には「両神御嶽神社」もあり、社の龍の細工が見事でした。
神社から先は、小刻みなアップダウンが続く尾根沿いを歩きます。
この稜線は5月の中旬頃に、アカヤシオで優雅に彩られるそうです。
ロープが張られた白井差新道と梵天尾根の分岐をすぎれば、頂上まであと少し。
山頂直下の岩壁を登りきると、
両神山山頂に到着!
頂上の景色はというと、ガスガスで奥秩父の山並みがわずかに見えただけ😂
本来ならば富士山、八ヶ岳、浅間山と大パノラマを楽しめたはずなんですが、この日は残念。
山頂はゴツゴツした岩の上にあり、10人もいれば窮屈だと感じる広さです。
文字が削れて読み取れない方位盤そばの岩陰に腰をおろして、お昼休憩。
ガスっていたおかげで、直射日光を浴びず妻は喜んでいました。
下山は来た道を戻ります。
しばらくは霧の中を歩き、奥秩父らしい幻想的な山歩きを楽しめました。
ただしクサリ場、ロープ場は注意が必要、岩肌や木の根が濡れていると滑りやすいので、慎重におりましょう。
薄川まで下りてきて、ホッと一息。
あとは渓谷美をゆっくり楽しみながら歩いきます。
こういう苔むした山道がたまりません。
両神山荘が見えてきたら下山終了。
両神山荘の名物ワンコも下山を迎えてくれました😄
この日はまだ時間に余裕があったので、ここから1時間ちょっとの場所にある、三峯神社へ行ってきました。
三峯神社は拝殿も華やかで、神秘的な空気がただよう関東屈指のパワースポットです。
興味のあるかたは続けてご覧ください🙂
三峯神社
両神山登山のあとは、標高約1,100mの山間部にあるパワースポット、三峯神社へ。
下山時刻は14時30分、拝殿扉や社務所が閉まるのが16時。
なんとか間に合いそうなので、「せっかくここまで来たんだから」と、お風呂を後回しにして向かいました。
道も空いていたので、1時間少しで到着。
駐車場に到着して拝殿へ向かうと、全国でもめずらしい三ツ鳥居がお出迎え。
両神神社と同じで鳥居の前には、立派なオオカミが静かに座っていました。
秩父三山をはじめとするこのあたりの地域では、オオカミが神格化されています。
その理由として、
「日本武尊が東征の際に武蔵野の地を訪れ、山中で道に迷った時、白いオオカミが現れ、道案内をしてくれて事なきをえたこと」
「農作物を荒らすシカ等の害獣をオオカミが追い払ってくれるので、守り神としてあがめたこと」
があげられ、秩父地方の神社では、神様の使いとして社殿の前には、狛犬ではなくオオカミが座っていることがあります。
先へ進むと1691年に建立された、隋身門(ずいしんもん)。
さらに奥へ進むと、1800年に建立された拝殿が現れます。
祭神は、イザナギノミコトとイザナミノミコト。
創建は日本武尊と伝えられています。
拝殿は細かな細工が華やかなで、豪華絢爛という言葉がピッタリ。
ちなみに、拝殿のそばにある興雲閣の日帰り入浴は、2021/7/16現在、休止中でした。
拝殿をあとにし、隋身門の向かいにある遥拝殿(ようはいでん)へ。
遥拝殿からは、妙法ケ岳(標高1329m)山頂にある、奥宮が一望できます。(ラクダのこぶのような場所です)
ここからの展望が、今日一の眺めでしたw
三峯神社観光を楽しんだあとは、近くにある道の駅大滝で温泉に入り、ひと段落♨
10年ぶりに訪れた両神山は、まばゆい緑が気持良く、マイナスイオンを十分に感じることができました。
両神山の山頂からの景色は残念でしたが、三峯神社の観光もでき、遥拝殿からの眺めもよかったので、妻の機嫌もしばらくよさそうです😀
山小屋・テント場情報(清滝小屋)
清滝小屋は、かつては有人小屋として営業していましたが、現在は避難小屋として解放されています。
外観はロッジ風の立派な建物で、収容人数は80名ほど。
日向大谷から3.2kmほど歩いた、標高約1,290mの場所にあります。
小屋の中をのぞいてみると、避難小屋とは思えないほど、きれいに整理されています。
トイレもきれいに掃除され、驚くことに水洗でした!(冬季用のトイレもあり)
小屋前には水場とテーブルがあり、休憩にもピッタリです。
炊事場は、蛇口のついた立派な水場も完備されてます。
テント場は平坦な場所にあり、10張りほど張れる広さがあります。
避難小屋の利用料金や、テント場の料金については、小屋の周囲に料金についての記載がないため、おそらく無料だと思われます。
気になる方がいれば、小鹿野町の観光協会(TEL.0494-79-1100)へ問い合わせてみてください。
首都圏からの公共交通機関でのアクセスは、大変な時間がかかるので、余裕をもって山を楽しみたい人は、清滝小屋で1泊するのもアリかと思います🙂
登山便利グッズ
Buff(バフ)はあると便利な高機能ヘッドウェアです。汗を素早く吸収し、尚且つ速乾性や防臭機能もあります。デザイン性もよく、10通り以上のアレンジが可能です。
スノーピークの超軽量(178g)折りたたみ傘。収納サイズも22cmと小型で、ザックに入れておけば、突然の雨にも安心。
ジェットボイルフラッシュは、0.5リットルの水を約1分40秒で沸騰させます。コーヒー用のお湯も、カップラーメン用のお湯も、あっという間に沸騰します。日帰りでもテント泊登山でも重宝する優れ物です。
温泉・お風呂
道の駅 両神温泉 薬師の湯:
【入浴料】600円
【営業時間】10:00~20:00(受付終了19:30)
【定休日】火曜日(祝日の場合は翌日に変更)
【備考】日向大谷登山口から一番近い温泉
国民宿舎 両神荘:
【入浴料】800円
【営業時間】12:00~20:00(受付終了19:30)
【定休日】なし
【備考】レストランで¥1,000以上利用すると、入浴料が半額に!
西武秩父駅前温泉 祭の湯:
【入浴料】平日:900円 土日祝:1,100円
【営業時間】10:00~22:00(受付終了21:30)
【定休日】なし
【備考】駅直結の広々スーパー銭湯
道の駅 大滝温泉 遊湯館:
【入浴料】平日:700円 土日祝:800円
【営業時間】
4~11月 10:00~20:00
12~3月 10:00~19:00
【定休日】木曜日(祝日の場合は営業、振替なし)
【備考】半露天の岩風呂とひのきの内湯あり
地図情報
25000図:両神山 周辺図
出典:国土地理院ウェブサイト
両神山へのアクセス
公共交通アクセス
【路線バス】
【西武秩父駅線】西武秩父駅~両神庁舎
【日向大谷三峰口線】両神庁舎~日向大谷口
時刻表や路線図などの詳しい情報は、小鹿野町営バスのHPをご覧ください。
マイカーアクセス
日向大谷口の駐車場は有料から無料を含めて、4箇所(約50台)あります。
一番遠い駐車場からでも登山口まで、歩いて10分ほどです。
トイレは登山口前に水洗の100円チップトイレ、バス停前に昔ながらの無料トイレがあります。
5月や紅葉のシーズンは毎年、誘導員さんが登場するほど混み合い、朝8時には満車になります。
日向大谷口 両神山荘前駐車場:
【駐車台数】約10台
【料金】1,000円
【営業時間】24時間
【備考】駐車料金は両神山荘へ
日向大谷口 バス停横駐車場:
【駐車台数】12台
【料金】500円
【営業時間】24時間
【備考】駐車料金は両神山荘へ
日向大谷口 無料第1駐車場:
【駐車台数】約15台
【料金】無料
【営業時間】24時間
日向大谷口 無料第2駐車場:
【駐車台数】約10台
【料金】無料
【営業時間】24時間
まとめ
両神山登山についてまとめてみましたが、いかがだったでしょうか?
今回の山行では、頂上からの景色はガスで見えなく残念でしたが、緑あふれる登山道にすっかり癒されてしまいました。
コース上はクサリ場やすべりやすい路面など、さまざまなアトラクションともいえる難所が出てくるので、初心者がレベルアップを目指すには最適だと思います。
両神山の特徴を簡単にまとめると、こんな感じです。
よいところ:
・晴れていれば360度の大展望
・コース途中に水場とトイレあり
・奥秩父の原生林を味わえる
注意点:
・滑りやすい土の路面
・増水時の薄川の徒渉ポイント
・山頂の狭さ(ハイシーズン時)
・駐車場の確保(ハイシーズン時)
清滝小屋のテン場は立派なので、いつか両神山を縦走するときにでも利用してみようと思います。
下山後の疲れた体を癒す温泉スポットもたくさんあるので、ぜひ両神山を訪れてみてください😃
それでは、最後までご覧頂きありがとうございました!